ベタ兄弟 弟編 番外


朝6時。起床。
床に敷布団を一枚敷いて上から毛布をかけただけのところから上半身を起こし、眠い目をこすりつつ自分の周囲を確認する。
窓の外ではすでに太陽があたりを照らしはじめ、まだ人気の少ない街中を鳥や犬の鳴き声がささやかに飛び交う。

視線を自分の右隣へやると兄が青いハーフパンツとTシャツを大きく乱し、ゆっくりとした寝息をたてながら寝ていた。
今、我が家では仕事の都合でなかなか帰ってこない親に代わって彼が家事を任されている(むしろ自分からやっている)。
正直な話、洗濯物の畳み方も粗雑で、任せなさいと言わんばかりに肩を張って作る食事もお世辞にもうまいとは言えない。
手先も決して器用ではないので包丁を扱う際やアイロンをかける際にしょっちゅう生傷をつくる。
見ていられずに自分が替わると言っても聞かずますます作業に熱中していく彼を見て、最近は何も言わないようにしている。

ふと、彼の乱れたシャツからのぞく腹を見る。
最近少し太ってきたらしく、見て分かるほどに腹の肉が前に出ている。

ぶに。

人差し指がわりとめりこむ。運動不足のせいだろうか。それとも別の何かによるストレスのせいだろうか。
かつて鍛えられた面影を残す柔らかい腹の感触を確かめるように何度つついても、彼は眉ひとつ動かさずに規則正しい寝息を立てている。

よほど疲れているらしい。

親の仕事が忙しくなってからというもの、彼は部活を辞め、毎日なるべく早く帰宅し在宅時間の大半を家事に費やしている。
緑色のエプロンを身につけフライパンをいじる兄よりも、よれた制服を着て、運動で上気した様を残した顔で冷たい麦茶を喉に流し込む
体格のしまった兄のほうが格好良かったと思うし、慣れない家事をするよりも楽しく部活をしているほうが彼も幸せだと思うのだが。
そんな感じのことをある日彼にぼやくと、彼は洗い物をする手を休めずに眉間に軽くしわを寄せていた。
その時の複雑な感情を無理矢理飲み込んだような、何か言いたげな表情を未だに忘れることが出来ない。

それを払うように顔を左右に振り、よたよたと不安定に布団から出る。
そういえば昨日、彼が朝ごはんにあんぱんを買っていたっけ。
まるで導かれるようにテーブルに向かい、そこに置かれたコンビニ袋からあんぱんを取り出して立ったまま一口頬張る。
中身は自分の好みであるこしあんで、なめらかなあまい餡がするすると口の中で広がる。
寝起きで口が渇いているのも相まって、すっきりとよく冷えた牛乳が欲しくなる。
しかし、なぜか冷蔵庫まで歩く気力も起きずそのまま椅子にもたれ掛かる。あんぱんをもう一口頬張った。
天井の蛍光灯を見上げる。
考えてみると、自分の周りのことの大半を彼がこなしていることに気づく。

「・・・・・・。」

あの様子だと、家を出る30分前にならないと起きないだろう。どうせ用意しておかないと何も食べずに家を出る。
たべかけのあんぱんをテーブルに置き、わりとしっかりとした足取りで台所へ向かい、自分が牛乳を飲む為ではなく冷蔵庫のドアを開く。

今日は暑くなりそうだ。だから――。



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なんか後々こじれそうなので(弟の悟り具合が)ボツ。でもせっかく書いたのでアップ。問題作。
主観視点のようで主観になりきれてない感が。チクショー。
献身的な兄とそれを気遣う弟。ベタです。
気遣うと言っても、兄のプライドや弟への愛情にはあまり勘付いてない辺りはまだまだ未熟。
弟よ、一人前までもう1歩だ。




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